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ひかりのガーデン

ひかりの家族のWeb Magazine

プレアデスの人

20131101_subaru
 見晴らしの良い高台で暗くなるのを待っていた
 標高約700m
 市街地の灯りが目に焼き付く

 ここは市内でも屈指の夜景スポット
 次から次へと入れ替わり立ち代わり人々が訪れる場所

 ただ一人
 闇に埋もれて望遠鏡の調整に励むヤツがいた
 彼こそが私だ

 21:00くらいを回った頃だろうか… 背後から声を掛けられた
 「あの… 星、これで見えるんですか?」
 柔らかくて明るい声だった
 横には彼氏さん(だんなさんかもしれない)がいる
 恋人同士にも見えるし夫婦にも見える
 仲の良さそうなカップルに見えた

 「あっ、はい。見れますよ。じゃぁあのモヤっとした星見えますか?」
 手元のライトですばるの方を指す。
 「すばる』って言うんですけど、アレを見せましょうね。ちょっと待ってくださいね」

 期待に胸を膨らませているのが伝わってくる
 よくわからなかったが彼氏さんも期待しているっぽい
 暗闇なのに瞳が輝いてるように見える
 私もなぜか鼓動が早くなるのを覚える

「すばる」なんかで良かったんだろうか?と自問自答する
 私にとってはただの星
 光の点にしかすぎないだからだ
 写真にすればそれこそ目映い光を放つ星団だということがわかる
 そのために私はここに来ているようなものだ

 いそいそと望遠鏡の視野にすばるを収める
 「はい、どうぞ。ここからのぞいて見てください(^^)」
 てくてくてく… 望遠鏡のアイピースを指差しながらここですね、
 と言う感じで私を見た後、覗き込んだ。

 「わぁ… 星がいっぱい…」
 「ちょ、ちょっとオレにも見せてよ」
 と彼氏さん。
 「すごい奇麗よ、星がいっぱい」
 と彼女さん
 「おぉ、すげー、すごいですね!」
 と彼氏さん

 嬉しい。妙に嬉しい。
 私の好きな単なる趣味にしか過ぎないことが
 人に喜ばれている。幸せな気分になる

 季節は秋。でもここは山の上
 風も強く冬といってもいいくらいに寒い
 体を縮込ませていた二人に気付いた

 「良かったらどうぞ」
 あらかじめポケットに入れていたホッカイロを二人に渡す。
 よっぽど寒かったんだろう
 快く受け取ってくれた(^^)

 暗闇なのになぜだろう?
 微笑みを浮かべた二人が見えたような気がする。
 すばるのように美しくも可愛らしい二人に出会えた夜だった。


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