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プレアデスの人
見晴らしの良い高台で暗くなるのを待っていた
標高約700m
市街地の灯りが目に焼き付く
ここは市内でも屈指の夜景スポット
次から次へと入れ替わり立ち代わり人々が訪れる場所
ただ一人
闇に埋もれて望遠鏡の調整に励むヤツがいた
彼こそが私だ
21:00くらいを回った頃だろうか… 背後から声を掛けられた
「あの… 星、これで見えるんですか?」
柔らかくて明るい声だった
横には彼氏さん(だんなさんかもしれない)がいる
恋人同士にも見えるし夫婦にも見える
仲の良さそうなカップルに見えた
「あっ、はい。見れますよ。じゃぁあのモヤっとした星見えますか?」
手元のライトですばるの方を指す。
「すばる』って言うんですけど、アレを見せましょうね。ちょっと待ってくださいね」
期待に胸を膨らませているのが伝わってくる
よくわからなかったが彼氏さんも期待しているっぽい
暗闇なのに瞳が輝いてるように見える
私もなぜか鼓動が早くなるのを覚える
「すばる」なんかで良かったんだろうか?と自問自答する
私にとってはただの星
光の点にしかすぎないだからだ
写真にすればそれこそ目映い光を放つ星団だということがわかる
そのために私はここに来ているようなものだ
いそいそと望遠鏡の視野にすばるを収める
「はい、どうぞ。ここからのぞいて見てください(^^)」
てくてくてく… 望遠鏡のアイピースを指差しながらここですね、
と言う感じで私を見た後、覗き込んだ。
「わぁ… 星がいっぱい…」
「ちょ、ちょっとオレにも見せてよ」
と彼氏さん。
「すごい奇麗よ、星がいっぱい」
と彼女さん
「おぉ、すげー、すごいですね!」
と彼氏さん
嬉しい。妙に嬉しい。
私の好きな単なる趣味にしか過ぎないことが
人に喜ばれている。幸せな気分になる
季節は秋。でもここは山の上
風も強く冬といってもいいくらいに寒い
体を縮込ませていた二人に気付いた
「良かったらどうぞ」
あらかじめポケットに入れていたホッカイロを二人に渡す。
よっぽど寒かったんだろう
快く受け取ってくれた(^^)
暗闇なのになぜだろう?
微笑みを浮かべた二人が見えたような気がする。
すばるのように美しくも可愛らしい二人に出会えた夜だった。