Search

ひかりのガーデン

ひかりの家族のWeb Magazine

そっとしておく

 

in Ghana ガーナにて
 

 

 

そっとしておいたら、
自然とうまくいくことってたくさんある。

どんなにがんばっても、
思いどおりにならない体験をした人たちは、
それを自然にみにつけているように思う。

マラリアに罹って高熱でふらふらのまま旅していたとき、
グループのみんなは
「日本に帰る?」と心配していた。

 

毎日決められた行程で移動しなければならず、
国際空港があるところは限られているから、
とにかくちょっとでも大きい街に出るまでは、
具合が悪かろうが、一緒にトラックに乗ってキャンプしながら移動するしかなかった。

それでも、「日本に帰る」という選択肢が
わたしにはあった。

 

ガーナの小さな海辺のまちで、市場でご飯を食べていたら、
元気なガーナ人のおばちゃんが(おばちゃんじゃなくて若い人だったかもしれないが)、
話しかけてきた。

「マラリアなの? わたし日本人知ってるのよ」

わたしがマラリアだと聞いて
「薬飲んだのか」とか、
「大丈夫か」ではなくて、

「日本人知ってる」という反応がきたのには驚いた。

熱で頭がぼーっとしていたので、正直どうでもよかったが、
彼女が「日本人」を連れてきたので話してみようと思った。

 

外国では、「日本人知ってる」といって、
中国や東南アジアの国の人を紹介されることはよくある話だ。
だから、正直なところ、日本人を連れてくるとは思っていなかった。

その人は、ちょっとぶっきらぼうな感じで、
日本人特有の親切そうな感じというか、おせっかいな感じがまったくなかったが、
日本語で、「マラリア?大丈夫?」と言った。

 

そして快適なホテルのようなところに何日かお世話になった。
すごく長い時間だったように感じるが、たぶん1日や2日のことだ。
そんなにゆったりした滞在のあるツアーではなかったから。

すべての記憶が、マラリアの熱がつくった幻覚みたいになっている。

西アフリカのちょっと大きな街の病院のどこにいっても
「重症のマラリア」と診断されたのに、
治療するために日本に戻ったら
まだ治療していないのに、その痕跡もないくらいに健康だった。

あれはなんだったのかと、今も思う。

選択肢があると思うから、あたふたするし、
迷い悩む。

 

そっとしておくことも、大切なのかもしれない。
なにもできないと絶望する気持ちになるときには。

 


© 2024 ひかりのガーデン . All Rights Reserved.