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ひかりのガーデン

ひかりの家族のWeb Magazine

出版社をつくる

一冊の本との出会いが、運命を変えてくれることがあります。

それが、たとえ誰もが知るベストセラーではなく、
本屋の片隅にひっそりと残っていた
背表紙が日焼けした古びた本だとしても。

まるで運命の出会いをまっていたかのように、
今の自分にぴったりのメッセージを届けてくれることがあるのです。

 

母子家庭でひとりっ子、子どものころほとんどの時間をひとりで過ごしたわたし自身も
本に育まれ、救われてきたうちのひとりです。

「普通じゃない」境遇で育ったわたしには、
本の世界にみるさまざまな「ありかた」「考えかた」は、
どこにもしっくりとは属することができない自分にとって
生存への承認でさえありました。

 

心理学では、所属に対する欲求は、本能なのだそうです。
「普通じゃない」「誰とも同じではない」という恐怖は、
生存を根本的に脅かす魔物のようなものでした。

そんなわたしにとって、たとえ本の世界であったとしても
「似ている」考えや境遇を見いだせたことは、大げさな表現かもしれませんが、
本当に「自分という存在の承認」であり、
「生きていていいのかもしれない」という暗闇のなかのひとすじのひかりでもあったのです。

 

あるとき、
「本を出したい。伝えたいことがたくさんあって、書いて書いて書きまくっているのに、
なかなか出版社が本を出しましょうという話がこないなぁ」
とわたしの信頼するある先生がおっしゃいました。
わたしの周りには「出版プロデューサー」という肩書きの人がたくさんいます。
その中にはこの世界の大御所といわれる方もいるし、出版社の編集者をしている友人もいます。

彼らの話から察するに、「売れる本」でないと企画が通らないらしい。
出版社が企業である以上、当然のことです。

まず5000部売れるかどうかが
商業出版の企画を通すためのひとつの目安、みたいなことも聞きました。

採算を考えたらたしかに大事なことなのだけれど、
わたしが本当に実現したいことは、
今ひとりぼっちでがんばっている誰かに
「ひとすじのひかり」のメッセージを届けること。

5000部「売れる」ことより、たったひとりの人であったとしても
「生きたい」「生まれてきてよかった」と思ってもらえることのほうがうれしいのです。

わたしにとって本の存在価値とは、「人生に前向きな影響力をもつこと」なのですから。

 

しかしながら、経済の問題や健康問題など、物質や肉体レベルに対応する本より
精神世界の本の読者の絶対数は、ぐんと少なくなりますし、
その次元がどんどん多次元化していくにつれ、読者が少なくなります。

ニュートンの法則は実生活においても、目に見える事象で説明できるので理解しやすいのですが、
アインシュタインの相対性理論は、数式では理解できても
「目に見える現象」で理解するのが難解なので、わかる人が減るのと同じようなものかもしれません。

どんなに必要としている人の数が少なくとも、
ひとりでも必要としている人に出会えたなら
その本は意味があるとわたしは思うのです。

 

そうはいっても、自分でつくった小冊子を扱っていただく書店をみつけるのも
簡単なことではなかったですし、そんな意気込みだけで企画を持ち込んでも
いい返事はもらえなさそうです。

 

そんなとき、ふと最近友人との会話で交わされた言葉が脳裏をかすめました。

「今のインターネットは詐欺まがいなことがたくさんまかり通ってて、なんか違う気がする」
「技術ってみんなの幸せのために使われるべきものだと思うんだよね。
技術が愛から離れたとき、文明が滅びてしまったのかもしれないよね」
「インターネットというものを愛で使ったらどうなるのか見てやろうじゃないの」

 

それが、「ひかりのガーデン」をつくった動機でした。
マーケティングではなく、わたしたちメンバーが「ひかりを感じる」なにかを発信してみよう。
誰かが暗やみにふるえているときの、ひとすじのひかりを見いだせるきっかけとなるように。

 

「わたしが出版社をやって本を出せばいいんだ。
必要としているひとりのために、メッセージを届けるアホな出版社があってもいいじゃないか。」

そう思ったのです。

幸いなことに今は電子書籍やオンデマンド印刷など
今までには考えられなかったかたちで「本」がつくれる。

「技術を愛で使う」
ほかからみたら同じなのかもしれませんが、目的は、違うのです。

売れる本ではなく、必要とされている本を。
ひとすじのひかりになるメッセージを届ける出版社をつくろうと決めました。

 

とはいえ、なにも知らないことばかり。

でもありがたいことに、すばらしい著者からたくされたメッセージがすでにあり、
ベテラン技術者とベテランの校正者と、そして計らずしも新規事業立ち上げばかりやってきたわたしと。

必要な助けはもたらされると信じて。

 


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