Search

ひかりのガーデン

ひかりの家族のWeb Magazine

ひっこししました

マリの少女

 

 

 

 

 

 

 

お引越しました。

お引越しはきらいではありません。
きらいではない、というよりも、すき、といった方がいいのかもしれません。

わたしはとにかくよく引越しします。

「引越ししたい」と思ってお部屋を探すというよりは、
引越しする理由ができて、新しい場所に呼ばれるようです。

そんな流れになったのは、神戸の地震のあとから。
生まれてからそれまでは、お引越しはしたことがなかったし、
転校生はわたしにとって憧れでした。

いじめられっ子だった当時のわたしには、
自分のことを知らない人たちのなかで新しく人間関係をやり直せることは
うらやましいことだったからです。

神戸で大きな地震があるまでの20年あまりは、
親の都合で一度だけ引っ越した以外は引越ししたことがありません。

ですから当然のように引越しは大変なことだと思っていました。

神戸の地震のあと、めまぐるしくいろんなことが起こり、
いくつかの記憶はもうリセットされてしまって、思いだせなくなりました。

でも不思議と暮らしていくことができて、
人は記憶がなくてもいきていけるのだと知りました。
同じころ、病気が原因で記憶をなくした友人がいて、
彼女がわたしを忘れてしまったことは悲しかったですが、

それもまたわたしが「記憶」をもっているからであって、

こんなときの「記憶」は「苦しみ」を生み出すだけの
不都合な存在なのかもしれないなと思ったのでした。

アフリカ縦断とか、スペインの巡礼に出るとか、
お部屋をひきはらって旅に出ることが多いので、
そんなときは、執着の大掃除になります。

アフリカを旅する前のわたしにはまだ荷物がそこそこありました。
当時の友人がいったのです。

「卒業アルバムも文集も、本当に見たくなったら誰かにみせてもらえる。
本当に持っていないと困るものなどなにもない。」

本当にそうで、パスポートも、免許証も、通帳も再発行できなくなかったし、
生きていくことに本当に必要なものは、不思議と手に入るのでした。

今回は3年ほど住んでからの引越しで、そんなに荷物がないと思っていたら、
気づかないうちにモノが増えていて、使っていないものがたくさんありました。

今、必要なものは、本当に少しだけ。

そうあらためて思ったのでした。


© 2024 ひかりのガーデン . All Rights Reserved.